BOARD 養生板

場面に適応した養生板を

建築現場や屋内での物品移送時などに壁、床を守る養生板。プラスチック製のものから金属製のものまで、輸送する物品や、場面、場所に応じた様々な種類の養生板が存在します。以下の表は弊社が取り扱う代表的な養生板の特徴を比較したものです。

実は差がある青ベニヤの防滑・非防滑

作業現場で使用されている低発泡養生板に「青ベニヤ」と呼ばれるものがあります。「青ベニヤ」は大きく分けてバージン材を使用したタイプと再生材を利用したタイプの2種類があります。
この項ではバージン材を使用したタイプについて説明します。
青ベニヤの素材は低発泡ポリプロピレン(以下PP)で、バージン材のPP樹脂を1.3倍に発泡させて通常3mmの厚さに作られます。PPは成形加工が容易で、ヒンジ特性(折り曲げ強度)が高く、不慮の折れ曲がりなどで破損する恐れも少ないという特徴があり、リサイクル性も高く、燃やしても有毒ガスが発生しないので、環境にやさしいという側面も併せ持っています。また、PP樹脂はプラスチック樹脂の中でも軽量の素材として広く認知されており、あらゆる現場で使用されています。さらに、この軽いPP樹脂を1.3倍の低発泡で押出し発泡※させることで、比重は原料の約75%となり、実に1/4の重量をカットすることができます。強度を維持しながら軽量性を高めることで、作業性に優れた養生板を作り上げています。

※押出し発泡の製造方法については、FOAM(発泡材)の項をご参照ください。

軽量な青ベニヤは養生場所の移動が多い引越現場や物品搬入時などの養生に最適な資材です。青ベニヤと呼ばれるものの中には2種類あると先の項で述べましたが、さらに細分化すると、バージン材の青ベニヤの中でも製品によって違いがあります。マルイチが取り扱っている低発泡養生板は防滑処理の施された防滑タイプ(多層式)と非防滑タイプ(単層式)の2種類。ともに高品質なバージン材を低倍率発泡させ、品質を保つ上で重要なアニーリングの工程を手間を惜しまず入念に行うことで完成された青ベニヤで、数多くの輸送の現場で使用されている製品です。安価な低発泡養生板にはコストダウンのために、品質の劣る原料を使用しているものや、アニーリング処理が不十分なもの、工程を省略しているものなどがあり、いずれの場合も反りや割れの原因となります。養生板に反りがあると足元の引っ掛かりや躓きの原因となり、事故に繋がる恐れがあるため、医療現場や精密機器の輸送に使用するには特に注意が必要です。通過の度に養生面を傷つける原因にもなります。また、材質の純度が低いものは日光に晒される環境で使用されることにより、反りなどの現象が徐々に現れてきます。たとえ、屋内であっても、窓から差し込む日差しによる影響は避けられません。
養生板の品質は輸送時の安心安全を維持するために、重要な要素となります。

アニーリングとは、養生板の製造において最終工程の熱処理(焼きなまし)を意味し、成形された製品を緩やかに加熱・冷却することによって樹脂成分の性質を安定させ、歪みを取り除くことを目的として施されます。反りにくく使いやすい高品質な養生板の製造においては決して欠くことのできない極めて重要な工程です。
養生板はダイスで原料を練った後、高熱で柔らかくした樹脂を数mmの厚さで板状に押し出し、ローラーで成型することで製造されますが、その際に、外気に触れることで冷えやすい端部と冷えにくい中心部の間に温度差が発生します。この温度差は、樹脂の性質に影響を及ぼし、樹脂成分にムラを生じさせ強度差を発生させる要因となるため、熱を持った養生板をパレット上に積み上げ、ウェイトを載せた状態で複数のヒーターを用いて加熱処理を行います。コンテナなどを「室(むろ)」として利用する場合もあり、加熱処理は約7時間から12時間をかけて行います。さらに高温、常温、冷却の3つに温度帯を分け、製品の温度を緩やかに下げる除冷を行うため、全工程を終えるまでに合計で約14時間から24時間を要します。

気温の低い冬季と気温の高い夏季では最適な温度や加熱・冷却時間は異なるため、アニーリングは季節に合わせて調整が必要となる繊細な工程でもあります。さらに多層式の養生板では接着した部材同士を安定させる必要があるため、アニーリングは製品の品質を左右する上で特に重要な工程として位置付けられています。マルイチの取り扱う青ベニヤは、防滑タイプ、非防滑タイプ共に品質にこだわり、的確な手順で丹念にアニーリング処理を施されており、現在国内で流通している低発泡養生板の中で、最も高品質な製品です。

再生PP製養生板の注意点

PP(ポリプロピレン)はリサイクル性が高い素材ですので、リサイクルされた再生PPはクリアファイルやPPバンド、簡易標識などに利用されてきましたが、近年は養生板にも広く使用されています。再生PPを使用した養生板は環境にやさしいものを使用しているというイメージにつながる利点はありますが、安全性が要求される養生板として使用するためには、その強度が使用する環境に耐えうる水準に達していることをしっかりと確認する必要があります。再生PPは役目を終えたPP素材を一度溶かし、再度成形して生成されますが、その品質は再生材の種類に大きく左右されます。
再生材の種類は「プレコンシューマー(工場廃棄品)」、「ポストコンシューマー(一般廃棄品)」の2種類に分類され、「プレコンシューマー(工場廃棄品)」とは主に生産工場から排出される端材など、消費者の手に渡らず再生材となったもの、「ポストコンシューマー(一般廃棄品)」は消費者が使用し、廃棄されたものを再度利用したものです。「ポストコンシューマー(一般廃棄品)」は消費者の手に一度渡ったものを再利用するため、場所によって組成が不統一であったり不純物の混入は避けられないものとなります。不純物の濃度が高いと溶かした際に均等に混ぜることができず、強度にムラが出てしまいます。また、再生PPは発泡させることが難しく、無発泡の無垢板に成形されるのが一般的です。重量を低減するために、バージン材使用の青ベニヤの規格(3mm)より薄い約2mmに成形され、耐荷重、耐衝撃強度も低下し、重量物が乗り上げた際に破損し養生面を傷める恐れがあります。加えて、不純物が多い再生PPは均一に発色せず、黒色にしか着色できないため、表面にブルーのバージン材を貼り付けて見た目の均一化を図った商品も存在します。

再生材の養生板への利用は長らくこのような方法で行われてきましたが、「プレコンシューマー(工場廃棄品)」のPP材料を使用し、バージン材と遜色なく発泡、着色させる技術も開発され、バージン材と同等の品質を持った低発泡養生板も登場しました。しかし、「プレコンシューマー(工場廃棄品)」を使用した再生養生板の製造には多くの工程が必要となり、コストはバージン材を使用したものと変わらないというのが現状で、製造メーカーの業務縮小により、現在は生産が中止されています。このように再生PPを使用した養生板も工夫され、性能はバージン材と遜色ないものも開発されていますが、上質な再生材、不純物の多い再生材の区別には注意が必要です。しかし、必ずしもプレコンシューマー(工場廃棄品)・ポストコンシューマー(一般廃棄品)共に再生材が無機能ということではありません。それぞれの用途に合わせた素材の選択が必要です。

静電気から精密機器を守るカイロン

物流の現場で輸送されるものの中には非常に繊細な荷物も多々あります。液晶や半導体LSI(大規模集積回路)の含まれる製品などの精密機器類は人体から発生するわずかな静電気でも簡単に破壊されてしまいます。静電気による損傷を受けやすい電子部品は、「静電気敏感性デバイス(Electrostatic Discharge Sensitive Device)」と呼ばれ、取り扱いには特に注意が必要になります。そのような半導体デバイスが含まれる精密機器を輸送する場合、ESD(静電気放電)対策が最重要課題となります。ESDとは、Electro-Static Discharge(静電気放電)の略称で、人体のような帯電した導電性の物体が電子機器など他の導電性物体に接触したり接近したりすることによって発生する現象です。人がカーペットの上を歩行すると、高湿度(相対湿度65~95%)の環境下でも約1,500ボルト、低湿度(相対湿度10~20%)の環境下では、実に約35,000ボルトに達する静電気が発生すると言われています。これは、ほとんどのデバイスが容易に破壊されてしまうレベルの数値です。下記の表は、静電気敏感性デバイスの耐電圧を示したものです。表を見ると、高湿度の環境下で起こる約1,500ボルトの電圧でも、デバイスに影響が出る恐れがあることが分かります。低湿度の環境下で起こる約35,000ボルトの電圧では、ほとんどのデバイスが容易に破壊されてしまう数値であることが分かります。

そこで必須となるのが、静電気を逃すことで静電気のない安全な環境を作ることです。導電性養生板「カイロン」はベースとなるPP(ポリプロピレン)樹脂にカーボンを練り込むことで、接触した人や台車の静電気を外へ逃がすように作られています。精密機器の輸送やクリーンルームにおける作業はもちろん、一般搬入時に静電気に弱いコンピュータ関連機器や大切なデータの保護にも活用され、空気の乾燥する冬季の作業時に指先に発生する静電気放電を防止するなど、静電気が嫌われる様々な場面に利用することで、作業環境を改善させることにも役立ちます。特に冬季は養生板撤去作業の際、静電気が発生しにくく、作業効率の向上にも繋がります。また、ベース素材は前述したPP樹脂を使用していますので、本来の養生板としての保護機能も万全です。
マルイチの導電性養生板「カイロン」は、徹底したESD(静電気放電)管理を強力に後押しする製品です。

抵抗値ってご存知ですか?

一口に導電板と言っても性能は様々で、安全な輸送のためには使用する導電板の性能を把握することが重要です。その性能を示す値が「抵抗値」です。抵抗値が低いほど電気の通りを妨げないので、導電性が高いということになり、養生板として使用した際により効果的に静電気による影響を防ぐことができます。ESD(静電気放電)対策を確実に行うためには、抵抗値に注目し、導電板が作業環境や取り扱う荷物に適した低い抵抗値であることをしっかりと確認する必要があります。
電気抵抗値は「Ω(オーム)」という単位で表されます。1Ωは、1V(ボルト)の電圧をかけたときに1A(アンペア)の電流が流れる状態のことです。その関係性は以下の図のように表されます。

従って抵抗値が2Ωならば、1Vの電圧をかけても0.5Aの電流しか流れず、逆に1Aの電流を流そうと思えば2Vの電圧をかけなければなりません。抵抗値が高いほど同じ電圧でも電流は流れにくくなるということです。特許庁ホームページに公開されている「技術分野別特許マップ」の「機能性プラスチック」の項では抵抗値が107Ω以下のものを「導電性材料」と定義しています。導電性プラスチックは導電率の高い素材をプラスチック素材に混ぜ込むことで製造され、精密機器の輸送やクリーンルームでの作業では必須のものとなっています。日本空気清浄協会制作の「クリーンルームにおける静電気対策指針」には以下の表のように基準が記載されています。

マルイチの導電性養生板「カイロン」はPP(ポリプロピレン)樹脂に導電性の非常に高いカーボンパウダーを練り込んで製造される永久帯電防止製品です。界面活性剤を使用して表面のみに帯電防止成分を付与する製品とは違い、時間経過で帯電防止機能が薄れることがありません。
PPの抵抗値は1016Ω。これにカーボン(抵抗値1.64x10-5Ω)を練り込むことにより、104~6Ωの抵抗値を実現しています。失敗の許されない精密機器の輸送においては、この抵抗値が最も重要な問題となります。静電気の発生によって破損や誤作動の恐れのある精密機器等の高レベルの輸送においては、この抵抗値が最も重要な要素となり、導電性の低い養生板ではESD(静電気放電)対策の役目を果たすことができません。導電性養生板は価格ではなく性能で選択することが求められる製品です。

永久帯電防止装置とは

帯電防止を謳う製品の中には、「揮発性帯電防止」の製品と導電性能が半永久的に持続する「永久帯電防止」の製品が存在します。一般的な帯電防止製品は界面活性剤を使用して製品表面に帯電防止塗膜を付与していますが、これは時間経過とともに効果が薄れてしまいます。それに対して永久帯電防止製品は、原材料に帯電防止剤を練りこむことで持続的な効果を付与したものです。永久帯電防止の素材として一般的なのはカーボンです。カーボンを含有させることにより、半永久的に導電性能を持続する製品を提供することが可能です。

一方で、カーボンを含有させるとプラスチック樹脂本来の物性は低下することになります。そのため、カイロンは高品質のバージン材PP(ポリプロピレン)を原料とし、導電性と養生板に必要不可欠な強度の両立に最適な配合とすることで、強度試験においても他の養生板と比べて遜色ない結果を出しています。
カイロンは高性能な導電性、耐久性を長期にわたって発揮し続けます。

アルミ板はJIS規格品が求められる

アルミ(アルミニウム)には純アルミニウム製品の他、多種多様なアルミニウム合金製品が存在しています。アルミは微量の金属を加えることで各種合金になる特徴を持っており、特性を生かして様々な場所で使用されています。日本国内においては、求められる強度や成形性、耐食性等に応じてJIS規格で定められた合金記号で表わされます。マルイチが扱っているアルミ板はA5052P。船舶や車輌、建築用材にも使われる代表的なJIS規格のアルミ合金で、耐食性に優れた特徴をもっています。クリーンルームで使用されることも多く、主に2~3t程度の重量物を扱う現場で使用されています。

現在、日本国内では原料となるアルミ新地金の製錬は行われておらず、輸入した新地金を国内で製品加工しています。マルイチでは信頼のおける国内製造メーカーで圧延された製品のみを取り扱い、それを「国産品」と同等としています。
アルミ板の国内加工品と輸入品の品質差は大きく、ソニーや東芝といった大企業のように、JIS規格に適合した国内加工品の使用を要求される現場も多くあります。特に1mm~3mm厚のアルミ板については、国内加工品の品質に並ぶ輸入品は少ないと言われています。輸入品は国内加工品と比較して板厚のばらつきが大きいことや、直角度がしっかり出ていないこと、板内部に不純物が混入している場合があり、反りやひずみが発生する割合が高いこと等が指摘されています。生産国によってはスクラップ等から再生地金を精錬する際に不純物が混入しており1年も品質が持たないとの報告もあります。アルマイト加工の際に内部より腐食が発生するなど致命的な問題が確認されており、輸入品のアルミ板をクリーンルームで使用する際には特に注意が必要です。
弊社では、取り扱っている製品について検査機関に依頼し、ミルシートを発行するよう徹底しております。ミルシートはその製品の規格や生産地をはじめ成分や物性について証明するもので、製品の信頼性の証と捉えることができ、同じ国内加工品の製品でもその品質の信頼性の違いを明確にすることで、製品選択の材料とすることができます。アルミ板は使用される現場で行われる仕事が繊細となればなるほどJIS規格に適合した国内加工品の使用が求められるため、ミルシートの提示の有無は品質の高さを図る上で重要な要素となります。アルミ養生板は現場の要望や必要に迫られて安価なものを使用している現状があります。アルミ板は高価な製品ですが、だからこそ高品質で長期の使用が可能な国内加工品を選ぶことで、買い替えのコストを抑えることに繋がります。安全な輸送のためには、現場に合わせた選択と判断が必要です。

強化アルミニウム「ジュラルミン」

ジュラルミンはアルミ合金のひとつで、純アルミニウムに添加元素を加えて強化したものです。マルイチではJIS規格品であるA2017を取り扱っていますが、2000系合金のA2017は主成分のアルミニウムに約4%の銅と、0.5%のマグネシウム、0.5%のマンガンを含有した合金です。

アルミニウムの特徴として、「比強度の強さ」が挙げられます。比強度とは物質の強さを表す物理量のひとつで、密度あたりの引っ張り強さのことを言います。つまり比強度が大きいほど、軽いわりに強い材料であると言えます。ジュラルミンはアルミ合金の中でも特に機械的強度を高めることに重点が置かれています。マルイチで販売しているジュラルミンA2017は、同じアルミニウムのA5052と比べると高価ですが、比強度が高く、軽くて強度の優れた素材です。トランクや、航空機用材に使用されていることからもそれが分かります。しかし、ジュラルミンには弱点があります。ジュラルミンは水、特に海水に対しての耐食性が非常に弱く、水分に晒されてしまう環境下では、みるみるうちに腐食が進んでしまいます。そのため、ジュラルミンにアルマイト加工を行なうことは必須となります。ところがジュラルミンは材質に銅が含まれているため、アルマイト加工がかけづらいという難点があります。加工する際の電解によって銅が溶けだしてしまい、光沢や硬度が低下し耐食性も他のアルミより劣ってしまうのです。硬度や耐食性の低下を最低限に防ぐジュラルミンのアルマイト加工には高い技術が必要となり、加工できる工場も限られているため現在の加工技術では高価になってしまいますが、アルミよりも強い材質のため、資材にこだわりのある現場では使用され続けています。使用した場合、室内での保管はもちろんのこと、品質を保つためには使用後のメンテナンスも必要不可欠です。しっかりとしたメンテナンスを行なうことで長期間の活用が可能となります。

アルミを守り、強化するアルマイト構造

アルマイト加工とは、アルミ板表面に人工的に厚い酸化被膜を形成することで耐食性と硬度を向上させ、アルミ板の耐久性を高める手法です。酸素と結び付きやすいアルミは、空気に晒されると酸化被膜を作る性質があるため、一般的に錆びにくいと言われていますが、この皮膜は非常に薄く、屋外使用を続けると皮膜が傷つき、皮膜の綻びから入り込んだ物質との化学反応によって腐食が発生してしまいます。
そこで、硫酸やシュウ酸を用いた電解液を利用し、電気分解によって発生した酸素を使ってアルミ表面に厚い酸化被膜を形成させることで、傷に強く、水や酸素、化学反応による腐食を防ぐアルマイト加工が行われています。硬度も飛躍的に向上するため、養生板として長期の使用にも耐える耐久性を持たせることができ、クリーンルームにおける重量物の搬入などに使用されています。品質や安全対策に厳しい現場では、アルマイト加工の施されていないアルミ板は使用が認められない場合もあります。アルマイト加工を施すうえで、アルミ板の品質は重要な要素です。輸入品のアルミ板は内部に不純物が含まれている場合があり、アルマイト加工後にシミが出やすいことや、加工直後に内部から腐食が発生する事例などが報告されています。クリーンルームという基準の厳しい環境や、重量物の運搬という用途において、腐食や強度不足の発生は重大な事故に繋がる恐れがあります。正常なアルマイト加工が行えない可能性がある以上、輸入品はクリーンルームでの使用には適していないと考えられます。
良質なアルマイト加工を施すには高品質で信頼性のあるアルミ板が必要となるため、クリーンルームでの使用にはミルシートの提示が可能なJIS規格品が最も望ましいと言えます。

SUS板は生産国で品質が大違い

SUS板はステンレス鋼を原材料にした養生板のことを言います。「SUS(サス)板」という呼び方は、日本の規格であるJISに由来します。JIS表示では、物質ごとにアルファベットの接頭辞と数字を用いて品種番号が付与されており、ステンレス鋼は「SUS(鋼(Steel)+用途(Use)+ステンレス(Stainless)の頭文字)」と品種番号がつけられていることから、ステンレスのことを「SUS」と呼称するようになった経緯があります。中でも18%のクロム系、8%のニッケル系を含有し、耐食性に優れるJIS表示「SUS304」は別名18-8ステンレスとも呼ばれ、その品質は特に評価されており、家庭用品から自動車部品、工業用品、建築材料まで幅広く使用されています。一般的にイメージされる水回りなどのステンレスには安価なSUS430が使用される場合が多く、高級品にはSUS304が使用されています。

SUS板の原料であるステンレス鋼は空気中の酸素に触れることで表面に不動態皮膜と呼ばれる薄い膜を形成し腐食しやすい環境から守る性質があります。しかし、何らかの原因でバリアの役目を果たしている不動態皮膜が破壊されると、腐食が発生してしまいます。そのため、国産のSUS板でも、不動態被膜を破壊する塩分が付着した状態にすれば錆が発生する場合があります。また、金属加工などの現場で鉄粉が付着した状態を放置すると「もらい錆び」の状態になることもあります。しかし、錆びを取り除き、不動態皮膜を形成できる状態にすれば、SUSの性質によって皮膜を修復し元のように耐食性のあるSUS板に戻ります。
SUS板の品質は、国産(JIS製品)と海外産では大きく異なります。海外製品は企業によっては規格を守らず、JISでは8%とされているニッケルの含有量が3%~5%しかなく本来SUS304と認定されないものがSUS304として輸入され、日本国内に流通するという事例が発生しています。SUS304を構成するクロムとニッケルの含有量は錆び付きづらさに大きく影響します。クロムの量が少なければ少ない程、不動態被膜が弱くなり、鉄(スチール)のように錆びやすくなってしまうため、すぐに錆が発生し、JISのSUS304として使用できなくなります。ニッケルの含有量についても不動態皮膜の安定した形成に必須となり、少なければ形成に影響を及ぼすことになります。SUSは端材を溶かして成形することで繰り返し製品として使用できるリサイクル性の高さが利点ですが、その反面、JISに準じて製造工程が厳重に管理されたメーカー品を購入しなければ、長期使用が出来るか判別が難しい製品です。

規格を守っていない海外製品の場合、応力腐食割れと呼ばれるひび割れ、養生板として使用した際に亀裂が生じるなどといった事例が比較的多く発生することが報告されています。
アルミ板と同様、SUS板の品質を確かめる手段の一つに、メーカーや販売店などSUS板の提供元が製品のミルシート(検査証明書)を発行しているか否かを確認する方法があります。ミルシートはその製品の規格や生産地をはじめ成分や物性について証明するもので、製品の信頼の証と捉えることができます。
マルイチで取り扱っている製品は、JISに準じた国産でかつミルシートの提示ができるメーカーの製品を品質と信頼のある国産ブランド製品と捉え、お勧めしています。中でも、SUS板を成形する上で混入してしまう介在物の除去において精度の高いメーカー品をマルイチでは自信を持って提供しています。
重量物の輸送、クリーンルームでの養生など、特にSUS板を使用しての養生が必要な場面では、品質が重要な要素となります。SUS板は高価な資材ですが、高品質なものを選択することで長期使用が可能になり、運用コストを低く抑えることができます。JISの厳格な基準と設備で微粒子の流入を制限し、塵や埃が存在しない環境が求められるクリーンルームにおいて、錆の発生が懸念される製品を使用することは望ましくありません。安全な輸送のためには現場に合わせた選択と判断が必要です。

上質なSUS板かどうかを判断するための材料として、ミルシートだけでなくJIS表示の確認も重要です。これは厳しい品質基準をクリアした国産加工製品のみに表示が認められています。養生板として使用する場合、国産加工品の使用が最適ですが、海外製品を使う場合にも成分が保証されているSUS板の使用を推奨します。特にステンレス鋼の主要三大規格である「ASTM」「EN」「JIS」は国際的に信頼性・認知度がともに高い規格です。JIS規格品でない場合はASTM・EN規格品で代用することも可能です。

しかし、各国の規格は、制定される際の分類方法なども特徴があるため、それぞれの鋼種について厳密に対応しているわけではありません。含有されている成分をミルシートなどで確認し、その成分が仕様に合致しているかどうかを自身で判断する知識が必要不可欠です。特にクロム・ニッケルの含有量はSUS板の使用用途を大きく左右するため重要視しなければなりません。
グローバル化に伴い、様々な物品が世界中に供給されるようになりましたが、ステンレスに関しては、国ごとに異なる規格が存在するため、留意する必要があります。

SUS304は物流現場や一般的な環境で使用する汎用性の高いステンレス鋼です。そのため、塩分濃度が高い場所や高温の環境下においてSUS304では腐食に耐えられない現場が存在します。そのような場所ではSUS304よりも耐食性、耐熱性、機械的性質、物理的性質に優れた「高機能材」が使用されます。スーパーステンレス鋼などの高機能材はニッケル・クロム・モリブデンなどの合金成分をSUS304に比べて多く含んでいます。各合金成分の配合によって耐食性や高温強度などの特性を高めており、空港で使用できる耐久性の高いもの、塩分濃度が高い海洋環境でも腐食しない耐食性の高いもの、800℃を超える加熱炉など過酷な環境で使用されています。

また、その耐食性や耐熱性を生かして半導体や太陽電池の製造装置、燃料電池などの最先端分野にも使用されています。高機能材の特性は非常に多種多様なため、選択・使用をする際はメーカーに相談をしてから購入することを推奨します。もちろん、高機能材にもJISが存在しているため、選択・使用する際にはSUS304同様、注意が必要です。

重量物搬入。アルミに代わる先進素材養生板クロムウェル板

PP(ポリプロピレン)のバージン材を使用した養生板は非常に強度が高く、重量物を搬入する際の床養生にも十分対応できる製品です。PP板は青ベニヤよりも強い耐久性を持ち、アルミ板にも劣らない強度を兼ね備えています。このような高い強度を持つPP板は、価格がアルミ板よりもローコストで、軽量、金属と異なり腐食したり歪んだりせず管理方法も簡易的なためアルミ板の代替品として重量物搬入を行なう物流の現場で使用されています。また、PP板はポリエチレンやポリスチレンなどの他のプラスチック樹脂と比較して耐熱性、耐水性、耐薬品性に優れているため、特殊な環境下(クリーンルーム等)の養生にも適しています。重量物輸送の養生板としてPP板が多く利用されているのは、この耐性の高さにも理由があります。
マルイチの重量板クロムウェル(PP板)はバージン材を使用して製造しているため板の部位に強度の偏りがなく、通常使用した場合、割れや破損の恐れが少ない養生板です。工場の床養生はもちろん、病院やクリーンルームなどの、あらゆる場所で安心して使用できます。色は乳白と青の2色を取り扱っており床の種類によって色で区別し養生することも可能です。
PP板は様々な現場で高価なアルミ板の代替品として切り替わっており、今後も多くの現場で取り扱われていく先進素材養生板です。