SEWING 縫製

シート縫製50年の歴史

マルイチの原点は、地域に密着したトラックシートの製造です。
お客様にシートをご使用いただく中で、破損の発生に対しては迅速に修理を行い、お客様の要望に合わせた改造のご依頼には柔軟に対応して参りました。業務が多角化した現在も、創業以来培ってきた縫製の技術は高品質なマルイチの製品を支えています。この項では、縫製になくてはならないミシン、そしてマルイチの縫製にかけるこだわりを紹介していきます。

物流を支える縫製

マルイチの製品に使われる生地を接合する方法には、ミシンによる「縫製」と、ウェルダーによる「プレス溶着」があります。代表的な製品である「トラックシート」を例に挙げると、一般的に使われる樹脂コーティングの「ポリエステル帆布」と、自衛隊の幌車などに使われる、天然素材100%の「綿帆布」の2種類の生地を主に使用します。

樹脂コーティングの施してあるポリエステル帆布は、熱により表面の樹脂が溶けるため、プレス加工が可能です。トラックシートのような大きなサイズの製品を作る場合、一反の巾だけでは足りないため、プレス溶着により生地と生地を貼り合わせて大きな一枚布を作ります。プレス溶着は密閉性が高いため、より強固な接合を可能とし、トラックシートのような防水機能が求められる製品に向いています。一方で、綿帆布はプレス溶着が出来ないため、縫製により製作を行ないます。縫製はプレス溶着では不可能な複雑な形状にも対応することができ、アールなどの細かな部分も仕上げることが出来ます。

マルイチの製品では、綿帆布以外にもオックスフォード地やアルミ蒸着シートなどを使用しています。綿帆布のような溶着のできない生地で製品を作る場合、また、C-パックや毛布カバーなど立体的な製品を作る場合は、ミシンでの縫製が必要不可欠です。

縫製のデメリットを補う技術

縫製で製品を作る場合に問題となるのが、縫い目からの水の浸入です。トラックシートを製作する際、シートの端に強度を持たせるために生地の内側にロープを巻き込んで綴じるため、外周は縫製で仕立てを行います。トラックシートは荷物を水濡れから守る必要があるため、縫い目に目止め剤を塗布することで、縫い目からの漏水を防ぐ「シームシーリング加工」を施します。しかし、縫製では生地を完全に密封することができないため、密封が必要な緩衝材などの製品においてはプレス加工を使用するなど、用途やお客様のご要望に合わせた最良の加工方法を選択しています。

針と糸の選び方

ミシンに使用される針と糸にはそれぞれ太さがあります。効果的な針と糸の使い分けによって、製品の強度が決まります。分厚い生地で強度を持たせた縫製が必要な場合は太い糸と、それに対応した針が必要です。家庭用ミシン針で使われるような細い針を使ってしまうと縫製することが出来ず折れる危険性があります。対して薄地に繊細な縫製が求められる場面では、太い糸では仕上がりが崩れてしまいます。そのため、針には1/100レベルで多様な太さがあり、番手は3~30番手まで存在します。番手が大きくなるほど針は太くなっていきます。

基本的に針の太さが太くなるにつれ、使用する糸の太さも太くなっていきます。糸には0~40番手まで存在し、糸の場合は番手が大きくなるほど細くなっていきます。糸は太さで表すことが非常に難しいため、1kgの固まりで何mの長さになるかを表す単位として「番手」を用います。下記は一般的な糸の番手に対応した針の対照表です。

上記の表はあくまでも一般的な対照表で、マルイチではより美しく、より強い製品を製造するために、使用する針、糸を個別に選択する場合があります。一般的な対応から外れた番手の針の使用は、洗練された技術と経験が必要となります。

番手に対応したミシンで美しく

ミシンには使用できる糸の太さが限られており、生地の厚みや必要とされる強度によってミシンを使い分ける必要があります。マルイチでは製品ごとにミシンを使い分けることにより、必要な強度、審美性を持たせるようにしています。ただ一括りにミシンと言えども様々な種類が存在します。ミシンの種類を大別すると、一般的によく目にする家庭用ミシン、洋裁に使われる職業用ミシン、シート製品などの分厚い生地も縫うことが出来る工業用ミシンの三種類に分かれます。そのミシンの中でも更に、電源を繋ぎペダルを踏めば縫製できる「電動ミシン」や、縫い速度やモーターの回転数を自動で制御する「電子ミシン」、最近では縫い目や形状をプログラミングすることで、だれでも簡単に縫製が可能な「プログラム式電子ミシン」なども存在します。プログラム式電子ミシンを使えば、簡単に縫製することが出来ますが、複雑な形状や最適な糸番手の判断は、電動ミシンで長年の経験を積んだ職人だからこそできる技なのです。
下記には、マルイチで使用している工業用ミシンの一部をご紹介します。

BROTHER こちらは20番の糸対応のミシンです。家庭用ミシンに近い強度の工業用ミシンで、繊細な生地を縫製する際に使用されます。マルイチでは11番、14番の細い針を使用し、主に樹脂コーティングが施されていないやわらかい布地の縫製に使用しています。

SEIKO こちらは最も太い0番糸対応の希少なミシンです。20番の糸を3本撚り合わせた太さの0番糸は、この厚物用ミシンでなければ綺麗に縫うことが出来ません。テーブルが細く円柱のような形をしているため、筒縫いや曲縫いなどに最適です。シート帆布の縫製はもちろん、厚物ベルトや皮革、レザーなどの特殊な極厚物にも対応しており、強力な接合が可能です。厚物対応のため他のミシンと比較して大きさも一回り大きく、並んだミシンの中でも目立つ存在です。

SEIKO こちらは5番、6番、8番の糸が使用できるマルイチのメインミシンです。通常の樹脂コーティングされたターポリン生地などは基本的にこのミシンで縫製されます。工業用ミシンでは一般的なサイズですが、家庭用のミシン(主に糸番手30~90を使用)と比較すると針も糸も太いものを使用しています。職人の技術、適したミシン、針、糸の選択が高品質な製品を生み出します。

BROTHER こちらはプログラム式電子ミシンです。マルイチでは0番の糸を使用し、ベルト縫製等に利用しています。ミシンに接続した『プログラマー』を用いて作成した縫製データに従い、設定されたフレームの中に複雑な模様やパターンを高速で大量に作成することが出来る点が特徴です。生地押さえを自動で行うため、エアコンプレッサーから圧縮空気を取り込む機構を備えます。

SEIKO こちらは同時に2列の縫製ができる特殊仕様のミシンです。マルイチでは5番の糸を使用し、トラックシートの縫製をしています。2本針を使用しているため、1回で2列一度に縫製でき、往復して縫う手間がかかりません。左右片方の針のみ停止することが出来るため角縫いも問題なく仕上がります。

JUKI こちらは20番、30番手対応のプログラム式ミシンです。縫い方を記憶させることが出来、プログラムが記憶させた縫い方に基づいて自動的に縫製作業を行なうミシンです。また、自動糸切り機能も搭載しているため高能率な作業が可能です。操作パネルには、出来高管理機能・稼働計測機能・下糸カウント機能が搭載され、作業工程に合わせた最良の選択を行なえます。薄物~中厚物までの生地を縫製でき、マルイチではケースロックなどを縫製するため使用します。